これからの高齢化社会においては従来の子供家族への依存を中心とした生活に代わる、新たな高齢期の暮らし方を創出していくことが必要とされてきています。その目指すべき方向性として、住み慣れた地域の中で友人や近隣の人々などと非血縁的なつながりを大切にしながら、各種の地域支援サービスや社会福祉サービスを積極的に活用するという生活の在り方が求められています。このような生活を実現する方法の1つとして、一人暮らしのお年寄りや老人夫婦など、独立した生活に不安を抱える人たちが、複数人の仲間と1つ屋根の下で助け合って暮らす「グループリビング」という住まい方があります。
こうした住まい方は高齢者や障害者らの共同生活が盛んな北欧などでは、既に数多く見られます。また急ピッチで高齢化の進む日本においても多様化が望まれる老後の暮らし方の1選択として、普及・定着に期待が高まっています。
日本において、高齢者グループリビングが見られ始めたのは、1980年代からでした。当時のグループリビング入居者は、もと看護婦仲間4人、顔見知りの独身女性3人、進学塾仲間5人といった何年も仕事仲間として付き合った者同士であったり、信仰や同じ意識で結ばれた仲間でした。つまり、長い付き合いと信頼の上に成立した強い絆のある仲間による取り組みでした。
現在のように、全く知らない人が集まって暮らす新しいグループリビングへの取り組みが始まったのは1990年代に入ってからでした。北欧などの先進事例を参考に、食事の時間が決まっていたり、外出を自由にできなかったりと、規則ずくめの高齢者施設ではなく、孤独な在宅やアパート暮らしでもない、高齢者の新たな暮らし方の想像を目指す一部の個人や市民グループなどによって、地道な試行錯誤が続けられてきました。そして経営者の理念に賛同する新しい仲間を募集し、その人数や運営方法、建物の形態などは様々なものが見られるようになりました。
2005年から財団法人JKAがグループリビングの建設事業費に助成を行い、それによって今年度まで全国に15の「高齢者生き活きグループリビング」が誕生しました。
グループリビングに代表されるような共同生活形態は、身体機能が少し低下したとしても出来るかぎり住み慣れた地域社会の中で“普通の生活”を継続したいというニーズの高まりを受けて、今後ますます拡大するのではないかと思われます。
グループリビングは非血縁関係にある者同士がお互いにコミュニケーションを基盤として住み合う共同生活の1つで、比較的元気な高齢者が、自発的に高齢期の自立支援や生活支援などを目的とするもので、従来家族が行ってきた無償の行為を、仲間と一緒に住んで補完し合おうとする暮らし方です。
各人は独立した住戸(または居室)に暮らし、食事を共にしたり、家事の一部を分担する、など何らかの共同生活を行いながら、運営主体や地域の中の生活支援サービスを受けて、地域での自立した生活を目指すものです。
グループリビングは高齢期の不安要素の解消の手段として、また高齢期の人生を豊かにするための手段であり、緊急時や困った時には可能な範囲で協力し補うという生活が、孤独感を取り除き、独居などでは得られない安心感をもたらすとして期待されています。
生活の共同化や共同空間での交流が入居者に満足感をもたらし、精神的に豊かで楽しさのある生活を送ることや、他の入居者と互いに学びあえる人間関係を構築することを可能にし、一方で1人になりたい時はなれるというプライバシーの確保がされています。
有料老人ホームなどに比べ、入居者の生活の中に共同性があることと必要なサービスだけを受けながら生活するため、経済的に合理的なため値段が安いのも大きな特徴です。また入居金額が高額ではなく償却期間が長いため、もし雰囲気が合わなければ気軽に退去できます。
場所によってはターミナルケアを経験しているグループリビングもあります。
グループリビングは制度化された住まいではないため運営主体、土地・建物所有形態、食事や掃除などの日常生活機能の確保の方法、入居者の合意形成の程度、住まいの中でのルール、費用、コーディネーターの有無や立場、地域の関わりの度合い、などグループリビングによってバリエーションがあります。
運営主体にはNPO法人、社会福祉法人、民間企業、個人などがあります。土地・建物所有形態は運営主体の所有、借地、借家の場合があります。日常生活機能の確保については、運営主体が自ら行う場合と外部のNPOや民間の生活サービスを利用する場合があります。コーディネーターは入居者または運営者が行う場合があります。